起源 ― 宮廷の遊戯から
タロットの確かな起源は14世紀イタリアの宮廷で使われたカードゲーム「トリオンフィ(勝利)」です。
当初は占いではなく、娯楽や社交の道具として楽しまれていました。
象徴の書として
15世紀以降、カードには寓意的な絵柄が描かれるようになり、人間の徳・悪徳・運命を象徴するイメージが加えられました。
これが後に「大アルカナ」と呼ばれる22枚の原型です。
神秘主義との融合
18世紀フランスでは、神秘思想家たちが「タロットは古代エジプトの知恵の書」と唱え、神秘主義的解釈が急速に広がりました。
19世紀には、フランスのエリファス・レヴィや英国の黄金の夜明け団が、タロットをカバラ・占星術・錬金術と統合し、秘教体系の一部としました。
ウェイト版の誕生
1909年、アーサー・エドワード・ウェイトと画家パメラ・コールマン・スミスによって制作された「ライダー=ウェイト版タロット」は、今日最も広く使われている標準デッキです。
人物や象徴を豊かに描いた絵柄は、直感的なリーディングを可能にしました。
現代のタロット
20世紀後半以降、タロットは世界中で多様化し、アート・心理療法・スピリチュアル実践の場で活用されています。
カードは「未来を占う道具」であると同時に、内なる自己を映す鏡としての役割を強めています。
🃏 タロットの歴史(年表+文献)
年表
- 14世紀:イタリア北部でカードゲーム「トリオンフィ」が貴族の間で流行
- 15世紀:寓意画を描いたカードが作られる(ヴィスコンティ=スフォルツァ版など)
- 18世紀:フランスの占い師エッティラ(Etteilla)がタロットを占いに使用
- 18世紀末:エリファス・レヴィが「タロット=古代エジプトの叡智」と唱える
- 19世紀後半:黄金の夜明け団(Golden Dawn)が占星術・カバラ・錬金術と結びつけ体系化
- 1909年:A.E.ウェイトとパメラ・コールマン・スミスによる「ライダー=ウェイト版」誕生
- 20世紀後半:世界中で芸術的・心理的タロットデッキが登場
- 現代:占いにとどまらず、アート・心理療法・自己探求のツールとして広がる
主な参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot (Duckworth, 1980)
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards (St. Martin’s Press, 1996)
- A.E. Waite, The Pictorial Key to the Tarot (1910)
- Israel Regardie, The Golden Dawn (1937)
- 松田アフラハム『タロットの歴史』青土社, 1998